
プロジェクトを進めていると、「予定どおりに進んでいたはずなのに、いつの間にか納期ギリギリになっていた」ということがあります。
複数のタスクを同時並行で進めるプロジェクトでは、すべての作業が同じように納期へ影響するわけではありません。多少遅れても全体のスケジュールには影響しない作業がある一方で、少し遅れただけでプロジェクト全体の完了が遅れてしまう作業もあります。
そこで知っておきたいのが、「クリティカルパス」です。
クリティカルパスとは、簡単にいうと、プロジェクトの開始から完了までにつながる複数の経路のうち、所要時間が最も長い経路です。
「一番長いなら、むしろ重要ではないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、この一番長い経路こそが、プロジェクト全体の完了時期を左右します。
この記事では、クリティカルパスの意味や一番長い経路になる理由を、初心者にもわかりやすく解説します。具体例を使った求め方や工程表・ガントチャートでの活用方法まで紹介するので、プロジェクト管理に慣れていない方もぜひ参考にしてください。
クリティカルパスとは、プロジェクトの開始から終了までに存在する複数の作業経路のうち、所要時間の合計が最も長い経路のことです。
プロジェクトでは、ひとつの作業が終わってから次の作業を始める場合もあれば、複数の作業を並行して進める場合もあります。
たとえばWebサイトを制作するとしましょう。
企画が決まったあと、「デザイン作成」と「原稿作成」をそれぞれ進め、両方が完成してからWebページを制作する、といった流れが考えられます。
この場合、プロジェクトの開始から終了までには複数の経路が生まれます。それぞれの経路にかかる時間を計算し、最も長いものを特定したものがクリティカルパスです。
つまり、クリティカルパスは単に「時間のかかる作業」という意味ではありません。
複数のタスクのつながりをひとつの経路として考え、その合計時間が最も長いものを指します。
クリティカルパスについて調べていると、「一番長い経路」という説明をよく見かけます。
なぜ長い経路が重要なのでしょうか。
理由は、その経路に必要な時間よりも早くプロジェクトを終わらせることができないからです。
仮に、次の2つの経路があったとします。
「A → B → D」で進む経路には10日、「A → C → D」で進む経路には15日かかるとします。
2つの経路を並行して進めても、プロジェクトを完了するには両方の作業が終わらなければなりません。そのため、10日で終わる経路が完了しても、もう一方が終わる15日目まではプロジェクト全体を完了できません。
この場合、15日かかる「A → C → D」がクリティカルパスです。
つまり、最も長い経路がプロジェクト全体の最短の完了期間を決めているということです。
なお、条件によっては同じ長さの経路が複数存在し、クリティカルパスがひとつだけとは限らない場合もあります。
クリティカルパスを理解するときに、一緒に知っておきたいのが「フロート」です。
フロートとは、簡単にいうと、プロジェクト全体の完了を遅らせずに、そのタスクを遅らせることができる余裕時間です。
たとえば、ある作業を2日遅らせても後工程に影響しないのであれば、その作業には2日分の余裕があると考えられます。
一方、クリティカルパス上のタスクは、基本的にこうした余裕がありません。クリティカルパス上の作業が1日遅れると、後続の作業も1日ずれ、結果としてプロジェクト全体の完了も1日遅れる可能性があります。
そのため、プロジェクト管理ではクリティカルパス上のタスクを特に注意して確認する必要があります。
ここからは、クリティカルパスの考え方を具体例で確認してみましょう。
Webページを制作するプロジェクトを例にします。

まず「企画を決める」が完了したあと、「デザインを作る」と「原稿を作る」を並行して進めます。
その両方が完成したらWebページを制作し、最後に確認して公開する流れです。
このプロジェクトには、主に次の2つの経路があります。
A → B → D → Eは、2日+3日+4日+1日で合計10日です。
一方、A → C → D → Eは、2日+5日+4日+1日で合計12日です。
この2つを比べると、「A → C → D → E」のほうが2日長くなっています。
したがって、この例におけるクリティカルパスは、
A → C → D → E
です。
ここで大切なのは、単純に「一番時間がかかるタスク」を探すわけではないことです。
この例では、最も長い単独のタスクは「C:原稿を作る」の5日間です。しかし、クリティカルパスとして見る場合には、AやD、Eまで含めたタスクのつながり全体を確認します。
また、「B:デザインを作る」は3日で完了するため、Cより2日早く終わります。つまり、一定の余裕があります。
一方、Cが1日遅れて6日かかれば、その後のDとEも1日ずつ後ろへずれる可能性があります。
このように考えると、「どのタスクを重点的に管理すべきなのか」が見えやすくなります。
クリティカルパスは、プロジェクトに必要なタスクとその関係を整理すると求められます。
難しそうに見えますが、基本的な考え方はシンプルです。
まず、プロジェクトの開始から完了までに必要なタスクを洗い出します。
たとえば新しいWebサイトを公開するのであれば、「企画」「原稿作成」「デザイン」「システム開発」「テスト」「公開準備」など、必要な作業をできるだけ具体的に書き出します。
このとき、作業の抜け漏れがあると、あとからクリティカルパスを正確に求められません。
タスクを整理するときには、WBSを活用する方法もあります。
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトに必要な作業を細かく分解して整理する方法です。
次に、タスク同士の前後関係を整理します。
たとえば、「原稿が完成しなければページ制作に進めない」「設計が終わらなければ開発を開始できない」といった関係です。
これをタスクの「依存関係」といいます。
一方で、「原稿作成とデザイン作成は同時に進められる」といったケースもあります。
すべてのタスクを一本道として考えるのではなく、どの作業を並行して進められるのかまで整理することがポイントです。
続いて、各タスクに必要な時間を見積もります。
たとえば、企画は2日、原稿作成は5日、デザインは3日、といった形です。
クリティカルパスは所要時間をもとに計算するため、この見積もりが大きくずれると、求めた結果の精度も下がってしまいます。
過去に似た業務を行ったことがある場合は、実績を参考にするとよいでしょう。
初めて行う作業の場合は、担当者に確認したり、少し余裕を持たせたりしながら現実的な期間を設定します。
タスクと依存関係、所要時間を整理したら、作業の流れを図にします。
クリティカルパスを求める際には、ガントチャートやPERT図、アローダイアグラム、ネットワーク工程表と呼ばれる図が使われることがあります。
名前だけを見ると難しく感じるかもしれませんが、基本的には、タスクの前後関係を線でつないで見える化したものと考えれば問題ありません。
プロジェクトのスタートからゴールまでにどのような経路があるのかを確認し、それぞれの所要時間を合計します。
最後に、スタートからゴールまでの経路を比較します。
その中で最も所要時間の長い経路がクリティカルパスです。
先ほどの例であれば、「A → B → D → E」の10日よりも、「A → C → D → E」の12日のほうが長いため、後者がクリティカルパスとなります。
クリティカルパスがわかったら、その経路上にあるタスクの進捗を特に注意して確認していきます。
クリティカルパスを求める目的は、単に工程表の中から長い経路を見つけることではありません。
実際のプロジェクト管理に活用することで、さまざまなメリットがあります。
プロジェクトには多くのタスクがあります。
すべてを同じ優先度で管理しようとすると、担当者やプロジェクトリーダーの負担が大きくなってしまいます。
クリティカルパスがわかれば、「このタスクが遅れるとプロジェクト全体に影響する」という重要な作業を把握できます。
そのため、限られた時間の中でも、優先して確認すべきポイントを判断しやすくなります。
クリティカルパス上にあるタスクが予定より遅れていれば、プロジェクト全体の納期にも影響する可能性があります。
反対に、クリティカルパスを把握していなければ、目の前のタスクは順調に見えていても、実は重要な工程が遅れていることに気づけないケースがあります。
重要なタスクをあらかじめ把握しておくことで、遅延の兆候に早く気づき、担当者の追加やスケジュール調整などの対応を検討しやすくなります。
「なんとか納期を3日短縮したい」といった場合にも、クリティカルパスは役立ちます。
プロジェクト全体の期間を短縮したいのであれば、余裕のあるタスクを短くしても全体の納期が変わらないことがあります。
一方、クリティカルパス上の作業時間を短縮できれば、プロジェクト全体の完了時期を早められる可能性があります。
どこを見直すと全体への効果が大きいのか判断しやすくなることも、クリティカルパスを把握するメリットです。
プロジェクト管理では、クリティカルパスのほかにも「工程表」「ガントチャート」「ボトルネック」「クリティカルチェーン」など、似た場面で使われる言葉があります。
それぞれの違いを整理しておきましょう。
工程表とは、プロジェクトや工事などに必要な作業とスケジュールを整理したものです。
「いつ、どの作業を行うのか」を全体的に把握する目的で使用されます。
一方、クリティカルパスは工程表そのものではありません。
工程の中に存在する複数の経路から、プロジェクト全体の完了時期を左右する最も長い経路を特定したものです。
つまり、工程表が「プロジェクト全体の予定」を表すものだとすれば、クリティカルパスは「その中でも特に納期への影響が大きい経路」と考えるとわかりやすいでしょう。
ガントチャートとは、タスクの開始日や終了日、期間などを横棒で表し、プロジェクト全体のスケジュールを見える化する方法です。
クリティカルパスが「プロジェクト完了までの重要な経路」を表すのに対し、ガントチャートは「各タスクをいつ行うのか」をわかりやすく表示するものです。
両者はどちらか一方を使うものではなく、組み合わせて活用できます。
クリティカルパスを意識しながらガントチャートで各タスクの進捗を確認すると、全体のスケジュールと重要な工程を同時に把握しやすくなります。
ボトルネックとは、業務や工程全体の処理能力を制限している部分のことです。
たとえば、1日に100個の商品を製造できる工程の中で、ある作業だけ50個しか処理できない場合、その作業が全体の生産能力を制限するボトルネックになっている可能性があります。
クリティカルパスは、プロジェクトの完了時期を左右する「経路」です。
そのため、ボトルネックとクリティカルパスは似ているように見えても、考えている対象が異なります。
クリティカルチェーンも、プロジェクトのスケジュール管理に使われる考え方です。
クリティカルパスでは、主にタスクの依存関係と所要時間をもとに重要な経路を考えます。
一方、クリティカルチェーンでは、人員や設備などのリソース制約も考慮します。
たとえば、別々のタスクを同時に進められる工程になっていても、どちらも同じ担当者が行う必要があれば、実際には同時進行できません。
こうしたリソース面まで考慮してスケジュールを組み立てるのがクリティカルチェーンの特徴です。
クリティカルパスは便利な考え方ですが、一度求めれば終わりというものではありません。
実務で活用するときには、いくつか注意したいポイントがあります。
クリティカルパスは、各タスクに設定した所要時間をもとに求めます。
そのため、最初の見積もりが実態とかけ離れていると、算出したクリティカルパスも現実のプロジェクトを正しく表さなくなります。
特に初めて取り組むプロジェクトでは、「このくらいで終わるだろう」と感覚だけで決めないことが重要です。
過去の実績や担当者の意見などを参考にしながら、できるだけ現実的な期間を設定しましょう。
クリティカルパスは、プロジェクト開始時に決めたものが最後まで固定されるとは限りません。
予定より早く終わるタスクもあれば、大幅に遅れるタスクもあります。
もともと余裕があった別の経路で遅れが発生し、その経路が新しいクリティカルパスになるケースもあります。
そのため、プロジェクト開始時に一度計算するだけではなく、進捗に応じて定期的に見直すことが重要です。
クリティカルパスが重要だからといって、それ以外のタスクを確認しなくてもよいわけではありません。
クリティカルパス外にあるタスクでも、余裕時間を超えて遅れればプロジェクト全体に影響します。
また、プロジェクトでは担当者の負荷や突発的なトラブル、取引先からの返答待ちなど、当初の工程表には表れにくい問題も発生します。
クリティカルパスを重点的に確認しつつ、プロジェクト全体の進捗にも目を配ることが大切です。
クリティカルパスを求めることで、納期への影響が大きいタスクを判断しやすくなります。
しかし、実際のプロジェクト管理では、「クリティカルパスがどこか」を知るだけでは十分ではありません。
誰が担当しているのか、いつまでに終える予定なのか、現在どこまで進んでいるのかなどを継続的に確認する必要があります。
そこで役立つのがガントチャートです。

ガントチャートを使うと、それぞれのタスクをいつ始め、いつまでに完了する予定なのかを時系列で確認できます。
複数のタスクが同時進行しているプロジェクトでは、一覧表だけで予定を管理すると、「どの作業が重なっているのか」「どこで遅れが発生しているのか」がわかりにくくなる場合があります。
ガントチャートでスケジュールを見える化すれば、プロジェクト全体の流れを把握しながら、クリティカルパス上の重要なタスクにも注意を向けやすくなります。
特に、専任のプロジェクトマネージャーがいない中小企業では、担当者だけが進捗を把握するのではなく、チーム全員が同じ情報を確認できる状態をつくることも大切です。
タスクが増えるほど、工程表やガントチャートを手作業で作成・更新する負担も大きくなります。
こうした場合は、プロジェクト管理ツールを活用する方法もあります。
たとえば「シェアガント」では、ガントチャートのほか、カンバンやタスクリスト、スケジュールカレンダーなど複数の表示方法を使ってプロジェクトを管理できます。それぞれの表示は連動しているため、メンバーごとに見やすい方法へ切り替えながら進捗を確認できます。
また、「AIガントチャート」では、プロジェクト名やキーワードなどを入力すると、AIがプロジェクト計画の土台となるガントチャートを自動で生成します。作成された内容はあとから自由に調整できるため、「まず計画のたたき台を作り、必要なタスクやスケジュールを確認する」といった使い方ができます。

クリティカルパスを考える際にも、最初に必要となるのはタスクとスケジュールの整理です。
最初から完璧な工程表を作ろうとして手が止まってしまう場合は、こうしたツールも活用しながら、まずプロジェクト全体を見える化するところから始めるとよいでしょう。
A.クリティカルパスとは、プロジェクトの開始から完了までにある複数の作業経路のうち、所要時間の合計が最も長い経路です。
クリティカルパス上のタスクが遅れると、プロジェクト全体の完了時期にも影響する可能性があるため、重点的な進捗管理が必要です。
A.最も長い経路が、プロジェクト全体を完了するために最低限必要な期間を決めるからです。
たとえば10日で終わる経路と15日かかる経路が並行して存在する場合、10日目に一方が終了しても、もう一方が完了する15日目まではプロジェクト全体を終えられません。
このため、最も長い経路がクリティカルパスになります。
A.まずプロジェクトに必要なタスクを洗い出し、それぞれの依存関係と所要時間を整理します。
その後、スタートからゴールまでに存在する経路ごとの所要時間を合計し、最も時間のかかる経路を探します。
その経路がクリティカルパスです。
A.クリティカルパスは「プロジェクト全体の完了時期を左右する重要な経路」を表します。
一方、ガントチャートは、各タスクの開始時期や終了時期などを時系列で見える化する方法です。
役割は異なりますが、ガントチャートを使ってスケジュール全体を管理しながら、クリティカルパスを重点的に確認すると、より効率的なプロジェクト管理につながります。
A.医療・看護分野でも「クリティカルパス」という言葉が使われますが、プロジェクト管理におけるクリティカルパスとは意味や用途が異なります。
医療分野では、患者に対して行う検査や治療、看護、退院までの流れなどを標準的なスケジュールとしてまとめたものを指す文脈で使われます。
本記事で解説しているのは、プロジェクト管理において「完了時期を左右する最長の作業経路」を意味するクリティカルパスです。
クリティカルパスとは、プロジェクトの開始から終了までにある複数の経路のうち、所要時間の合計が最も長い経路です。
「一番長い経路」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、大切なのは「この経路が遅れたら、プロジェクト全体も遅れる可能性が高い」と考えることです。
クリティカルパスを把握すると、次のようなことがわかりやすくなります。
ただし、クリティカルパスはプロジェクトの進捗によって変わる可能性があります。
最初に工程表を作って終わりにするのではなく、ガントチャートなどを使ってタスクやスケジュールを見える化し、定期的に状況を確認することが大切です。
「タスクが増えて工程管理が複雑になってきた」「誰がどこまで進めているのかわかりにくい」と感じたら、プロジェクト管理ツールを活用するのもひとつの方法です。
まずは必要なタスクを整理し、「どの作業がプロジェクトの完了時期を左右しているのか」を確認するところから始めてみましょう。