プロジェクト失敗の原因?WBSの本当の価値とは

2024.07.02

 

プロジェクト管理において、WBS(作業分解構造)は多くのプロジェクトマネージャーや専門家にとって不可欠なツールです。しかし、WBSが十分に機能しないケースも少なくありません。実際、プロジェクトが失敗する原因の一つとして、WBSの設計や運用のミスがしばしば指摘されています。

 

本記事では、WBSの基本概念とその重要性を解説し、うまく機能しないWBSの特徴を明らかにします。さらに、効果的なWBSを作成するための具体的なステップとポイントを紹介し、WBSを最大限活用するためのプロジェクト管理ツールとの連携方法についても触れます。この記事を通じて、WBSの本質的な価値を理解し、プロジェクト管理を成功に導くための実践的なアプローチを学んでいきましょう。

 

 

 

 WBS(作業分解構造)とは?

 

 

WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)は、プロジェクトを成功裏に完遂するために必要な作業を階層的に分解した構造です。WBSの主な目的は、プロジェクトの範囲を明確にし、各作業の詳細を定義することです。これによりプロジェクトの全体像が把握しやすくなり、チームメンバー全員が共通の理解を持つことができます。

 

 

 

WBSの定義と目的


WBSは、プロジェクト全体を最上位に置き、そこからサブプロジェクト、タスク、サブタスクといった形で細分化していく階層構造です。この構造により、各作業の関係性が明確になり、管理がしやすくなります。WBSの主な目的は以下の通りです。

 

 

  • プロジェクトの範囲を明確化

    全体像を把握し、スコープを明確にすることで、抜け漏れを防ぎます。

 

  • 作業の詳細化

    各作業を具体的に定義することで、作業内容の曖昧さを排除し、担当者が何をすべきかを明確にします。

 

  • リソースの適正配分

    作業ごとに必要なリソースを見積もり、効率的に割り当てます。

 

  • 進捗管理の効率化

    作業の進捗状況を細かく追跡し、問題発生時に迅速に対応できるようにします。

 

 

プロジェクト管理における役割


WBSはプロジェクト管理の中核を担います。プロジェクトの各フェーズにおいて、WBSは以下のような役割を果たします。

 

 

  • 計画フェーズ:

    プロジェクトの具体的な全体像を描き、スケジュールや予算の策定に活用します。

 

  • 実行フェーズ:

    各タスクの進捗を追跡し、担当者に具体的な作業指示を提供します。

 

  • 監視・制御フェーズ:

    進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて計画を修正します。

 

  • 完了フェーズ:

    全タスクの完了を確認し、プロジェクトの成果物をレビューします。

 

 

WBSは多くのプロジェクトで活用される基本的なツールですが、適切に作成されないとその効果は大きく減少します。次の章では、失敗するWBSの特徴について詳しく見ていきます。

 

 

 

失敗するWBSの特徴

 

 

WBS(作業分解構造)は、プロジェクト管理において非常に有効なツールですが、誤った使い方や設計ミスにより、かえってプロジェクトの失敗を招くこともあります。ここでは、失敗するWBSの特徴について詳しく見ていきます。

 

 

不明確なスコープ


WBSの最も基本的な役割は、プロジェクトのスコープを明確にすることです。しかし、スコープが曖昧だと、WBSの効果は大きく低下します。不明確なスコープは、以下のような問題を引き起こします。

 

タスクの漏れや重複

例えば、新しいソフトウェア開発プロジェクトで、UIデザインがスコープに含まれているか不明確な場合、デザイン作業が抜け落ちる可能性があります。逆に、複数のチームが同じ機能の開発を担当し、重複作業が発生することもあります。

 

誤ったリソース配分

例えば、スコープが曖昧なためにテストフェーズの重要性が過小評価され、テスト担当者が不足し、十分なテストが行われないままリリースされることがあります。

 

 

過度な詳細化


WBSはタスクを細分化して管理しやすくするためのツールですが、過度に詳細化しすぎると逆効果になることがあります。過度な詳細化のリスクは以下の通りです。

 

管理負荷の増大

例えば、5分単位のタスクに分解した場合、それぞれのタスクの進捗を把握し、更新するのが煩雑になり、全体の進捗管理が難しくなります。

 

チームの混乱

例えば、1日の中で10以上の小さなタスクに分けられた場合、チームメンバーがどのタスクに優先的に取り組むべきか分からなくなり、効率が低下する可能性があります。

 

 

適切なリソース割り当ての欠如


WBSはリソースの割り当てを適切に行うためのツールでもありますが、これが不十分だと以下のような問題が発生します。

 

リソースの非効率な使い方

例えば、専門知識を持つエンジニアが単純なデータ入力タスクに割り当てられると、そのエンジニアのスキルが十分に活用されず、リソースが効率的に使われません。

 

過負荷のリスク

例えば、重要なプロジェクトに対して限られた人数で対応することになり、特定のメンバーに過度な負担がかかり、その結果、作業が遅延する可能性があります。

 

 

更新と見直しの不足


WBSはプロジェクトの進行に伴い、状況に応じて見直しや更新が必要です。しかし、これを怠ると以下のような問題が生じます。

 

現実との乖離

例えば、初期のWBSでは3ヶ月で完了予定のタスクが、実際には技術的な問題で6ヶ月かかることが判明した場合、見直しを行わないとWBSが現実にそぐわなくなります。

 

問題の早期発見が難しい

例えば、タスクが遅延しているにもかかわらず、WBSが更新されていないために遅延が発見されず、対応が遅れることがあります。

 

 

これらの特徴を理解し、失敗するWBSを避けるためには、次の章の「成功するWBSの作成ステップ」を参考にすることが重要です。

 

 

 

成功するWBSの作成ステップ

 

WBS(作業分解構造)は、適切に作成・運用することで、プロジェクトの成功に大きく貢献します。ここでは、効果的なWBSを作成するための具体的なステップとポイントを詳しく紹介します。

 

 

  1. スコープの明確化


WBSを作成する最初のステップは、プロジェクトのスコープを明確に定義することです。スコープの明確化には以下のポイントが重要です。

 

プロジェクト目標の明確化

    • 具体的な目標設定:
      例えば、「新しいウェブサイトを開発する」だけでなく、「ユーザーが簡単にナビゲートできるレスポンシブデザインのウェブサイトを6ヶ月以内にリリースする」という具体的な目標を設定します。
    • SMART目標の活用:
      Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)というSMART基準に基づいた目標設定を行います。

 

スコープ記述書の作成

    • スコープ記述書の要素:
      スコープ記述書には、プロジェクトの目的、成果物、主要なマイルストーン、制約条件、仮定などを含めます。
    • 例:
      新しいソフトウェア開発プロジェクトの場合、スコープ記述書には「ユーザーインターフェースのデザイン」、「バックエンドシステムの開発」、「システムテスト」、「ユーザー教育」などの項目が含まれます。

 

 

  1. 階層構造の設計


WBSは階層構造で表現されるため、適切な階層構造を設計することが重要です。

 

大きなタスクから始める

    • トップレベルの定義:
      プロジェクト全体を最上位のタスクとして定義し、そこから細分化していきます。例えば、「ウェブサイト開発プロジェクト」をトップレベルとします。
    • サブプロジェクトの特定:
      トップレベルのタスクをさらに大きなサブプロジェクトに分けます。例えば、「デザイン」、「開発」、「テスト」、「導入」など。

 

階層レベルの決定

    • 適切な詳細度を保つ:
      階層の数を3~5に設定し、各階層で必要な詳細度を保持します。あまり細かくしすぎず、管理しやすいレベルにとどめます。
    • 実例:
      デザインフェーズを「UIデザイン」、「UXデザイン」、「プロトタイプ作成」といったサブタスクに分け、さらにそれぞれのタスクを細分化します。

 

 

  1. タスクの細分化と詳細化


各タスクを詳細に定義し、具体的な作業内容を明確にします。

 

タスクの分解

    • 細分化の方法:
      大きなタスクを小さな作業単位に分解します。例えば、「UIデザイン」を「ワイヤーフレーム作成」、「カラースキーム選定」、「インターフェースデザイン」に分解します。
    • 成果物の定義:
      各作業単位には明確な成果物を設定し、何をもってそのタスクが完了したとみなすかを明示します。

 

タスクの詳細化

    • タスク属性の設定:
      各タスクに対して、開始日、終了日、担当者、必要なリソース、進捗率などの属性を設定します。
    • 具体例:
      タスク「ワイヤーフレーム作成」の開始日を「2024-07-01」、終了日を「2024-07-05」、担当者を「デザインチームA」、必要なリソースを「Adobe XD」と設定します。

 

 

  1. 適切なリソース割り当て


リソースの適切な割り当ては、WBSの成功において不可欠です。

 

リソースの見積もり

    • リソース要件の特定:
      各タスクに必要なリソースを正確に見積もります。例えば、「UIデザイン」に必要なデザイナーの人数、デザインツールのライセンス、作業時間など。
    • コスト見積もり:
      各リソースのコストも見積もり、予算管理を行います。例えば、デザイナーの時間単価を考慮し、総コストを算出します。

 

リソースの割り当て

    • 適切な人材の選定:
      各タスクに対して、最適なスキルセットを持つリソースを割り当てます。例えば、「バックエンドシステムの開発」には、特定のプログラミング言語に精通したエンジニアを割り当てます。
    • リソースのバランス:
      過負荷を避けるために、リソースの割り当てをバランスよく行います。特定のメンバーに過度な負担がかからないように調整します。

 

  1. 定期的な更新と見直し


WBSはプロジェクトの進行に伴い、状況に応じて見直しや更新が必要です。

 

定期的なレビュー

    • 進捗報告会:
      定期的な進捗報告会を開催し、プロジェクトの進捗状況をレビューします。例えば、週次または月次でレビューを行い、WBSの各タスクの進行状況を確認します。
    • フィードバックの収集:
      チームメンバーやステークホルダーからのフィードバックを収集し、必要に応じてWBSを更新します。

 

変更管理プロセス

    • 変更要求の受け付け:
      変更要求が発生した場合に備えて、明確な変更管理プロセスを設定します。例えば、変更要求書を作成し、承認プロセスを経て変更を適用します。
    • 影響分析:
      変更がプロジェクト全体に与える影響を分析し、必要な調整を行います。例えば、スケジュールやリソース配分の再検討を行います。

 

 

  1. コミュニケーションとステークホルダーの巻き込み


WBSを効果的に運用するためには、チーム全体およびステークホルダーとのコミュニケーションが重要です。

 

透明性の確保

    • WBSの共有:
      WBSを全員がアクセスできる場所に保存し、常に最新の状態を共有します。例えば、プロジェクト管理ツールを利用して、WBSをリアルタイムで更新・共有します。
    • 見える化ツールの活用:
      WBSをガントチャートやカンバンボードなどの見える化ツールを使って視覚的に表示し、全員が進捗状況を一目で把握できるようにします。

 

ステークホルダーの巻き込み

    • 定期的なコミュニケーション:
      ステークホルダーとの定期的なミーティングや報告を通じて、プロジェクトの進行状況や課題を共有します。例えば、月次報告会や進捗報告メールを活用します。
    • 意見交換の場の提供:
      ステークホルダーからの意見やフィードバックを積極的に受け入れ、プロジェクトの改善に役立てます。例えば、ワークショップやブレインストーミングセッションを開催します。

 

 

これらのステップを踏むことで、WBSはプロジェクト管理において強力なツールとなり、プロジェクトの成功に大きく寄与することができます。次の章では、WBSをプロジェクト管理ツールとどのように連携させるかについて解説します。

 

 

 

WBSとプロジェクト管理ツール

 

 

WBS(作業分解構造)を効果的に運用するには、適切なプロジェクト管理ツールの活用が重要です。ここでは、WBSとプロジェクト管理ツールの連携方法について解説します。

 

 

ガントチャートとの連携


ガントチャートは、プロジェクトのスケジュール管理に非常に有用なツールです。WBSとガントチャートを連携させることで、プロジェクトの進捗状況を視覚的に把握しやすくなります。

 

プロジェクト管理ツール『シェアガント』

ガントチャートとは?

    • タスクの見える化:
      ガントチャートは、タスクの開始日と終了日を棒グラフ形式で表示し、各タスクの期間と順序を一目で確認できます。
    • 依存関係の設定:
      タスク間の依存関係を視覚的に表示することで、プロジェクトの流れを把握しやすくなります。

 

WBSとガントチャートの統合

    • タスクの階層表示:
      WBSの階層構造をそのままガントチャートに反映させ、各タスクの関係性を明確にします。
    • スケジュール管理:
      WBSで定義したタスクの開始日と終了日をガントチャートに入力し、プロジェクト全体のスケジュールを管理します。

 

 

おすすめのプロジェクト管理ツール


プロジェクト管理ツールを使用することで、WBSの管理がさらに効率的になります。

おすすめのガントチャートツールを詳しく紹介しているこちらの記事も、ぜひ参考にしてください。

 

 

シェアガントの活用方法

今回は、プロジェクト管理ツール『シェアガント』を例に活用方法を紹介します。

 

    • プロジェクトの設定:
      シェアガントで新しいプロジェクトを作成し、WBSの各階層をタスクとして設定します。例えば、「ウェブサイト開発プロジェクト」には、「UIデザイン」、「バックエンド開発」などを作成します。

 

    • タスクの詳細管理:
      各タスクに対して、詳細なサブタスクを作成し、担当者、期日、進捗率などを設定します。シェアガントのガントチャート機能を使って、タスクの進捗を視覚的に管理します。また、「カンバン」では進捗状況を管理できます。タスクが完了するごとに、タスクのカードを「完了」リストに移動させます。

 

    • チームのコミュニケーション:
      チャット機能やファイル添付機能を活用して、チーム内のコミュニケーションを円滑にし、タスクの進行をスムーズにします。

 

 

プロジェクト管理ツールのメリット


プロジェクト管理ツールを使用することで、WBSの管理がより効果的になります。その主なメリットは以下の通りです。

 

リアルタイムの情報共有

ツールを使うことで、チームメンバー全員が最新のWBS情報にアクセスでき、リアルタイムで進捗状況を確認できます。

 

効率的なコミュニケーション

コメント機能や通知機能を活用することで、チーム内のコミュニケーションがスムーズに行えます。

 

データの可視化

ガントチャートやカンバンボードなどの視覚的なツールを使うことで、プロジェクトの全体像を把握しやすくなります。

 

タスクの追跡と管理

各タスクの進捗状況、リソースの使用状況、問題点などを一元管理でき、プロジェクトの効率化が図れます。

 

 

WBSとプロジェクト管理ツールを適切に連携させることで、プロジェクト管理がより効果的になり、成功に近づけることができます。

 

 

 

おわりに

 

 

本記事では、WBSの基本概念とその重要性について説明し、失敗するWBSの特徴を明らかにしました。さらに、成功するWBSを作成するための具体的なステップとポイントについても紹介しました。

 

WBSは単なる計画ツールではなく、プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。正確に作成し、適切に使用することで、プロジェクトの進行をスムーズにし、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。

 

この記事が、皆様の今後のプロジェクトでWBSを最大限に活用し、成功を収めるためのサポートとなることを願っています。

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