組織やチームで目標を達成ため、納期までのスケジュールを組んで仕事を進めていくと、あるチームではうまくいくのに、あるチームではうまくいかないといった事例が出てきます。
時に期限を守れなかったり、納期直前にタスクが集中することで、チームが混乱したり関係者が消耗したりすることがあります。
こうした違いはなぜ生じるのでしょうか。
それは、「タスクの棚卸し」が適切に行われていないからです。
「タスクの棚卸し」とは、戦略的で着実な目標の達成を目指すために、必要なタスクを洗い出し、適切にメンバーと共有・役割分担をすることを指します。また、「タスクの棚卸し」をする際に、どのようなルール(単位や粒度)でタスクを構成するかによって、業務の抜け漏れが発生しにくくなったり、コミュニケーションコストが減ったりします。
このコラムでは、円滑なプロジェクト管理に必須な「タスクの棚卸し」の方法について解説します。
組織やチームで遂行しようとすると、どんなに個々の能力が高くても、多人数が関わることによるプロジェクト管理の難しさがあります。
この難しさの原因は、目標達成に必要なタスクや役割がメンバー間で適切に共有されていないことから生じます。作業漏れが生じ、その結果として作業ミスが起きたり、必要な場面で必要なメンバーがいなかったり、そのような事態が続くと、ひどい場合には期限を守れない状況にもなってしまいます。
では、なぜこのような事態が起きるのでしょうか?それは、プロジェクト管理に必要な「タスクの棚卸し」ができていないからです。
「タスクの棚卸し」とは、プロジェクト管理の混乱を防ぐために、どのような手順を踏むべきかを明らかにし、優先順位をつけてメンバーに割り振ることを言います。「タスクの棚卸し」を行うには、次の必要な5つのステップを踏む必要があります。
「タスクの棚卸し」をする際に、最初にすべきなのはプロジェクトメンバーの「役割分担を適切にすること」です。
役割分担とは、タスクを誰に割り当てるべきかという内容ではなく、プロジェクト全体における役割分担のことです。
タスクを割り当てる前に、プロジェクト全体の役割分担を決めておくことが、プロジェクト管理において非常に大切になってきます。
プロジェクト管理における役割として、「プロデューサー」と「ディレクター」、「プレイヤー」という3つの役割を設定します。
「プロデューサー」とは、プロジェクトにより生み出される成果物の「クオリティ」に責任を持ち、各工程において品質チェックを行い、承認する人のことを指します。
「ディレクター」とは、プロジェクトの進行と納期に責任を持ち、「プロデューサー」の品質チェックに合格するように、各工程において、必要なタスクを洗い出し、各メンバーのスケジュール調整と進捗管理を行う人のことを指します。
「プレイヤー」とは、プロジェクトにおいて、割り当てられたタスクを達成することに責任を持つ人のことを指します。
この役割分担の最大のポイントは、「品質管理」と「進捗管理」の相反する目的を持つ責任者を、それぞれ分けて設定していることです。
通常プロジェクトマネージャーが、品質と納期の双方に責任を持つことが多いと思われますが、これらの役割は多くの場合相反する目的を持つので、同じ人がやってしまうと、どちらかが疎かになってしまうことがあります。
例えば、「品質」だけを重視すると、スケジュール通りにプロジェクトの進行が難しくなり、納期を守れなくなるリスクが高まります。
一方で、「進捗管理」を重視するあまり成果物の品質を妥協すると、最終的な成果物とクライアントの信頼のそれぞれに影響が及ぶリスクが高まります。
小規模のプロジェクトであっても、最低限、これら3つの役割分担をしておくと、品質管理と進捗管理が安定します。
プロジェクトにおける役割分担を決めたら、そのプロジェクトの単位の大きさが適切か、見直すことが重要です。
プロジェクトとは、目的達成のために構成される組織やその業務のことですが、この定義に基づいてプロジェクト化しようとすると、さまざまなパターンでプロジェクトが構成できることに気づくと思います。
よくあるプロジェクトは、「クライアント1社から受注した案件に対する納品物を作る」という形で組成することが多いと考えられますが、実はプロジェクトの単位は、大きすぎても小さすぎてもダメで、適切なサイズというものがあります。
プロジェクトの単位としてどれくらい位が適切かというと、(1)で解説した「プロデューサー」と「ディレクター」、「プレイヤー」という役割分担が機能する単位であることが条件になります。
役割分担が機能する単位とは、「プロデューサー」が品質を担保でき、「ディレクター」が全ての「プレイヤー」のタスクの進捗を把握しきれ、「プレイヤー」が過重労働にならない程度に配置されている状態のことです。
これらの条件がクリアできれば、プロジェクトは「事業単位」だったり「クライアント単位」という大きな単位でも構成することが可能です。
プロジェクトの役割分担と、ブロジェクトの単位が決まったら、いよいよプロジェクトに必要なタスクを棚卸しします。
プロジェクトの単位と同様に、タスク化する基準やルールをどのように設定するかにより、プロジェクトの進行管理やコミュニケーションコストが変わり、プレイヤーにかかる負荷にも影響が及ぶことになります。
タスクの粒度が細かすぎると管理項目が多くなり、進捗のステータスの更新や把握にかかるチーム全体の負担が大きくなります。
逆に、大雑把過ぎると細かい作業漏れなどが発生するリスクが大きくなってしまいます。
タスクの粒度を決める上で参考になるのは、「Work Breakdown Structure (WBS)」という、プロジェクトのタスクを細分化して表で示す手法があります。
WBSによるタスクの棚卸しでは、まずはプロジェクト全体での大きな粒度のタスクを書き出し、それぞれのタスクに紐づく小さな粒度のタスクを「サブタスク」として洗い出し、遂行順序も反映させた形で構造的に並べていきます。
大きな粒度のタスクと細かい粒度のタスクとを構造的に切り分けられるので、視覚的に全体のプロジェクトの進捗が把握・共有でき、細かい作業の抜け漏れも起こりにくくなります。
この作業は、ガントチャートを作成するプロセスで細かく詰めていくことができます。
タスクの棚卸しを行なうときのポイントは、「タスクの洗い出し」と「タスクの並べ替え」を同時に行わないことです。
この4つの作業を同時に行わず、一つずつ行なうことがポイントです。
タスクの粒度は細かすぎても、大雑把すぎてもいけません。では、適切なタスクの粒度とは何でしょうか。
一般的にタスクを管理する際に用いられるのは、次の2つの指標で粒度を合わせることです。
プロセスの指標は、例えばシステム開発の場合、要件定義、機能設計、インターフェース設計、運用設計、コーディングというような、名前のついた実働業務をタスク化します。
一方、成果物の指標は上述の場合、要求分析を行ない「要件定義書」を作成する、機能をまとめた「機能設計」を作成する、というような何かしらのドキュメントやイメージ図などのアウトプットを作ることを目的としてタスク化する方法です。
プロセスは業務イメージが付きやすいですし、成果物はプロセスに付随して発生するアウトプットを元に判断することができます。
ただし、プロジェクトを完遂するためには、この2つの指標のどちらか片方に統一できないような業務が発生する場合があるため、抜け漏れが生まれたり、大雑把でイメージが出来ないタスクが発生したり、タスクの粒度がいつの間にか細分化されてしまったり、といったデメリットがあります。
そこで、もう一つの指標として「完了基準」を用いて、プロセスと成果物を経て『『どういう状態になっていればいいか』で判断するという方法がおすすめです。
タスクの棚卸しで重要なポイントは、タスクごとの「完了基準(エグジット・クライテリア)」を定めること、そして「チェックポイント」を設定することです。
「完了基準」とは、何を達成していれば、タスクが終了するかを判断する基準のことです。「完了基準」をいつまでに達成しておくかを決めることが、タスクの棚卸しにおいて非常に重要です。
このとき。タスクの「完了基準」を記載するときは、『どういう状態になっていればいいか』と考えることを推奨します。
例えば、「プロジェクトメンバーの役割を決定する」というタスクがあった場合は、次のようになります。
ポイントになるのは3の、『全員がその役割分担を認識してプロジェクトに取り組める状態になっていること』という一文です。
1の役割分担を決めたり2の体制図を作ったりしても、例えばメンバーが「プロデューサー」と「ディレクター」の違いがわかっておらず、自身に任命された役割の仕事が実現できない、といった3の状態が実現できていなければ、このタスクは「完了基準を満たしていない」ということになります。
また、タスクの中では、そのタスクを完了させなければ次のタスクに取りかかれないものがあります。
こういったタスクを「チェックポイント」として抽出し、そのタスクの完了基準をそれぞれ明示したうえで、全員と共有しておくことで、タスクの受け渡しがスムーズになります。
例えば、「適切な粒度のタスクを設計する」という次のタスクに取りかかるためには、「プロジェクトメンバーの役割を決定する」というタスクが完了していなければいけないという場合、「プロジェクトメンバーの役割を決定する」というタスクをチェックポイントとして抽出することになります。
プロジェクトは、プロジェクトメンバー全員がそれぞれに割り振られたタスクをこなすことで達成されます。
タスクの完了基準に特定のメンバーの役割がある場合には、その「チェックポイント」で必要なメンバーの予定を押さえ、その役割のタスク(例えばプロデューサーによるチェックなど)を追加しましょう。
組織によっては、メンバーが複数のプロジェクトを掛け持ちしていることがあります。メンバーの予定もどんどん埋まっていってしまいます。「チェックポイント」としてのメンバーの予定確保は、なるべく早い段階で行っておくとよいでしょう。
ここまで「タスクの棚卸し」がされていれば、あとは週1回程度のミーティングでチューニングすればうまくいくでしょう。
クラウドガントチャートツール「シェアガント」を使えば、これまで紹介してきた「タスクの棚卸し」が簡単にでき、プロジェクト管理が飛躍的に効率的に行えるようになります。
「シェアガント」では、以下のように、「プロジェクト」、「タスク・サブタスク」、「割り当てられたプレイヤー」、「タスクの予定と進捗ステータス表示」が構造的に見やすく表示できます。
この「タスクの棚卸し」をシェアガントを使って行ったある会社では、毎週の定例会議でプロジェクト全体の進捗確認作業に1.5時間かかっていたところを、30分足らずで完了できるようになったといいます。
プロジェクト管理にお困りの方は、本記事でご紹介した「タスクの棚卸し」の方法を、クラウドガントチャートツール「シェアガント」で実践してみてはいかがでしょうか。